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上野オークラ劇場に行ってきました

 福原です。

 上野恩寵公園近くにあるピンク映画専門の映画館、上野オークラ劇場に行ってきました。

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 以前からここの前を通るたび、この写真の建物の看板が気になっていて、いつか行きたいと思っていたのですが、前回参加した映像女性学の会にいらしていた浜野佐知監督の作品が上映されると知ったので、行ってまいりました。

 ピンク映画というのは、名前の通り性交描写のあるシーンが複数回盛り込まれている成人映画(今の言葉で言うと「R-18+」があたると思います)を指す言葉なんですが、今一般的に知られているAVと違う点は、性交描写を複数回入れてさえいれば、あとは好きに作って良いという制約の下、多くの監督たちが遺憾無く作家性を発揮させていた場であったため、映画の芸術的な側面が強調された映画が数多く存在するということです。一時は若手映画監督の登竜門として設けられていて、ピンク映画出身の映画監督の中には、『おくりびと』の滝田洋二郎、『リアル』の黒沢清、『Shall We ダンス?』の周防正行など、現在では国際的に高い評価を得ていたり、今の日本の映画界を代表する監督たちの名前もあります。なので、アダルトコンテンツという側面もありますが、それとは別に映画ファンとしても無視できない作品が多くあるのです。

 そのため僕自身、名画座などの特集上映でピンク映画を観る機会は度々あるのですが、ピンク映画の専門館は、今は無き浅草世界館という映画館に数年前に一度行って以来です。その時も友人から「ピンク映画館に行ったら凄い映画を観た」という風にすすめられたことがきっかけだったりします。僕が何が上映されてるかも知らずに世界館に行った時も、いまおかしんじ監督の『獣の交わり 天使とやる』という、キリスト教における信仰をテーマにした映画がたまたま上映されていて、大変驚きました。

 せいぜい40〜50人ぐらいしか座れないであろう浅草世界館に比べてオークラ劇場ははるかに広く、200人は入れるほどのキャパシティを持っていました。デジタル上映にこそなっていましたが、場内に入ると汗の臭いというか、なんだか男臭い匂いが鼻を付いてきました。上映中で暗い劇場を見渡すと、客席の上に靴を脱いで足をかけてるような影も見えました。客層は世界館と変わらず、大半は27歳である僕の倍近くか、それ以上の年をいっている男性のようでした。

 さて、今回は既に書いたように、浜野佐知監督の映画が上映されるということで観に来たのですが、ピンク映画の専門館は基本的に3本立てや2本立ての上映で、入場料を一度払えばあとは1日中好きなだけいられるというシステムなので、他の映画も併せて観ることにしました。

 

 まず最初は、榎本敏郎監督の2006年製作の『姉妹 淫乱な密戯』という映画です。

 移動型のブティックを営む光代と、その妹の靖子は、同じ喫茶店でバイトしていた静をブティックの仕事に誘うが、その時に静が恋人を誤って殺してしまったことを知る。靖子は静を匿い、同じ家に住むよう提案すると共に、静に対して秘めていた想いを打ち明ける。一方、未亡人である光代は寂しさを埋めるためかホストにはまり・・・という心理サスペンス映画でした。

 

 2本目は、浜野佐知監督の2012年製作の『SEXファイル むさぼり肉体潜入』という映画です。

 セックスをするのに国による免許が必要となった世界で、違法な無免許セックスをとりしまる、通称セックス捜査官・FGが、違法なセックスが行われているのではないかと疑いをかけられているカルト集団「烏骨鶏の会」に潜入し、実態を捜査する・・・という映画でした。

 「あなた・・・セックス捜査官?」「ハハッ、やめてよ。」というやりとりがあるのですが、"セックス捜査官"という言葉が一般代名詞になっている世界とはまた不思議なもんだなあ、秘密組織とかじゃないのか、とか考えながら観てました。終盤に明かされる、セックスするのに必要な資格や、FGがなぜセックス捜査官になったのか、そして烏骨鶏の会の会長の正体が明らかになった時は、色々な意味で驚きました。

 

 さて、ここまで2本立て続けにサラッと紹介しましたが、この2本を観ている間に、今まで映画館で見たことのないような不思議な光景に出くわします。スクリーンの前を横切ってしまうことお構いなしかのように、コツコツとヒールを鳴らしながら劇場内を定期的にうろつくボディコン姿の女性が、スクリーンには一切目もやらず、客席をじーっと見ているし、また客席の別の方では「ハイ、ハイ、もう出るからね、うん、ありがとう。」というおじいさんのような声も聞こえてくるのです。

 あきらかに映画を観る、あるいは寝る以外の何かを行っている客が居る!ということに気づかざるを得ないわけです。噂に聞かなかったわけではないですが、以前浅草の世界館に行った時にはそんなことがなかったので、驚きながら映画を観ていました。

 

 そして僕が驚愕した事件は、3本目の時に起きます。ユーロスペースという映画館の日活ロマンポルノ特集で観たことがある曽根中生監督の1984年製作の『白昼の女狩り』という映画です。

 小遣い欲しさにビニ本(ヌード雑誌)の撮影に加わった女子学生が、兵士のような格好に身を包み、ゲーム感覚で男女を次々と襲っては殺すという謎の集団を率いる、アヌビスという謎の男に目をつけられる・・・というコメディなんだかホラーなんだかよくわからない映画でした。その内容の過激さからか、完成したものの公開中止に追い込まれ、数年前のユーロスペースで行われた上映の時に数十年ぶりに公開されたといういわくつきの映画です。(実は、この公開中止もすぐに解除され、すぐに普通に公開されたらしいのですが・・・。)

 この映画の終盤、女子学生がビニ本撮影時のネガフィルムをネタに脅してくるカメラマンと共に入った、山中のペンションの中でのシーン辺りで、近くの席に50代にもいってるんじゃないかという初老の男女のカップルが座りました。ほお、カップルでピンク映画館に来るとは珍しいな、とか考えていたのですが、さほど映画にも興味もなさそうな様子で喋っていると、いつの間にやら話し声が聞こえなくなってきました。映画に集中し始めたのかなとか考えていると、僕の視界の端で、なにやら女性の頭らしきものが一定の速度でピストンのような動きをしているのがチラチラとはいってくるじゃないですか・・・。

 これで何やってるかわからないような人間でもないので、いやいや見るまい。別に映画館の上映前のアナウンスでは「携帯電話の利用はやめてください」としか言われていないじゃないか、そういうことをやったって問題ないはずだ、僕は映画を観に来たんだと言い聞かせながらしばらく観てると、またやはりそのカップルの方から、今度は女性の押し殺した喘ぎ声のような音が聞こえてくるのです。いや、おそらく女性の押し殺した喘ぎ声そのものでしょう。

 それでもやはり見るまい、僕は映画を観に来たんだと言い聞かせながら一心に映画のスクリーンを観るようにつとめていたのですが、しかし僕の周りのお客さんが次々と、そのカップルの方に向かうわけです。カップルが座っている方とは逆の方に座っているおじさんも、明らかにスクリーンなんか見ておらず、そのカップルの方を身を乗り出してひたすら見ているわけです。そのおじさんがついに席を離れ、カップルの方へと歩き出した時、さすがに僕も、そのおじさんを目で追うようにしてカップルの方へと視界を移したのです。

 

 なんか女の人足広げてる!しかもそこにおじさん達がめっちゃ群がって覗いてる!ていうか携帯のライトで照らしてる人までいる!

 

 とっさにスクリーンに目を戻すと、ちょうどスクリーンでは次々と惨劇が起きるシーンが上映されていました。一方客席ではこうした光景が繰り広げられているという、自分が今まで目の当たりにしてこなかったカルチャーの姿への驚きのあまり、一度観たことがある映画ということもあって、あと数分のところで退出してしまいました・・・。

 

 今では回ごとの入れ替え制が主流になりましたが、元々映画館はこのオークラ劇場と同じように2本立て、3本立てで上映されていて、入場料を一度払えば最後まで居られるというシステムのものが多かったみたいです。その為、時間を余したサラリーマンが眠りに来たり、学生が勉強もろくにせず一日中入り浸ることができたりというのが、昔の映画館の風景にはあったそうです。

 古い映画館や独立で運営している映画館、名画座が次々と閉館していく中で、映画を観に来るためだけの場所ではなく、映画を中心とした文化の発信・交流の場という形としての映画館という試みは、現在の日本の各地の映画館で取り組まれています。ですが、その原点回帰のようにも思える取り組みの中にも残らないであろう、日本の映画館の原風景として、大人にのみ入ることが許されたディープスポットとして、上野オークラ劇場は未だ残っています。

 ツイッターなどのSNSにおける発信なども積極的に行っていますが、お客さんが来てこその映画館です。そしてピンク映画館には、DVDや名画座の特集上映で観るのとは全く違う驚きが待っています。気になる方は、是非とも上野オークラ劇場に一度足を運んでいただきたいです!