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第33回 映像女性学の会 レポート

福原です。

 

渋谷区文化総合センター大和田8階にある渋谷区女性センターアイリスにて開かれた、"映像女性学の会"に参加してきました!

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 映像女性学の会とは、主に女性の映画監督の作品を上映する会で、以前、りべるたん映画祭にてご一緒させてもらった、ドキュメンタリー監督の早川由美子さんが、前回参加されていたことで知りました。受付にて、上映会の告知チラシと共に、これまでの歴史が書かれた紙を渡されたのですが、今回で33回目になるそうです。

 

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 近年、『ゆれる』の西川美和監督、『かもめ食堂』の荻上直子監督、『さくらん』の蜷川実花監督、『おとぎ話みたい』の山戸結希監督、『殯の森』などで国際的に高い評価を得ている河瀬直美監督、そしてキネマ旬報で『そこのみにて光輝く』で2014年邦画ベストワンを獲得した呉美保監督など、女性の映画監督の活躍こそ目覚しいですが、やはり女性の映画監督というのは基本的に少数派にあたります。

 現に、映画を志す者として恥を忍んで告白しますが、このリストに書かれている監督のほとんどを存じあげませんでした・・・。

 その中で、女性監督に絞り、この様な無料(!!)上映会が定期的に開かれていることは、大変意義深いことでもあると思い、参加いたしました。

 

 今回上映されたのは、渋谷昶子監督の『挑戦』(1963年)という作品です。

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 この作品は、当時140以上の連勝記録を作り上げ、世界中から「東洋の魔女」「太平洋の台風」として恐れられていた、日紡貝塚女子バレーボールチームを取り上げた、短編ドキュメンタリー映画です。チームを持つ会社であるユニチカから依頼を受けて作られた、当時数多く作られた企業のPRの為の映画のひとつです。

 こうして「企業PR」なんて言われると、青汁のCMみたいなものを思い出す人もいるかもしれませんが、映画を観てみるとビックリする出来になっています。

 "女性監督が撮った女子バレーボールチーム"と言われれば、選手の女性としての一面に迫るような映画を想像される方もいるかもしれません(実際、この映画のプレス試写では「例えば編み物をやっているだとかの選手の女性らしい一面が描かれていない」などの批判が飛んだらしいです。笑)が、映画の中で彼女たちは女性として、いや、男性である監督も含めて、誰一人として人間として扱われてはいないのです。

 1963年ともなれば東京オリンピック直前で、『巨人の星』連載開始よりも前なので、今日では批判の矢面に立たされる様な、スポ根的な精神論を地で行く世界(現に、この映画に添えられていたナレーションは、そうした世界観、人間観に基づくものになっています。)であることは想像できると思うのですが、そうしたスポ根作品の核ともなる、高揚感すら意図的に排除され、選手たちはボールを受ける機械、監督はボールを投げる機械かのように映し出されています。構図も左右対称の構図で、カメラの動きまで計算され尽くしたシステマティックな動きとなっており、どこまでも人為的な要素が排除されています。途中、倒れてしまう選手もいるのですが、だからといってその選手の人格などには寄らず、それこそ調子の悪くなった部品かのように扱われるのです。加えて、作中映し出される人物は一人たりとも、笑顔を見せません。

 ドキュメンタリー監督の端くれである僕自身、この映画の徹底的に突き放したような眼差しには、驚嘆いたしました。

 しかし、そうして機械のようになっていく選手たちや監督を、この映画は決して否定的に扱ってはいません。むしろ、映されている選手たちが受ける過酷なトレーニングの果ての、辛いとか疲れたとかを通り越した、いわば無我の境地とでも呼ぶようなところまで、観客を追体験させるのが狙いだからです。現に、映画は彼女たちの練習する姿を小気味よく見せることなどはせずに、長回しや、同じようなカットの反復で、これでもかというぐらいに見せます。

 当時「東洋の魔女」として国内外からはやし立てられていたスター選手達が、人並みの練習でその圧倒的な強さを築けるわけなどないという事実を、改めて確認させたかったのでしょう。その為にはもはや、"性別"というパーソナリティを構成する一部すら排除する必要があったのかもしれません。

 確かに、監督も"女性"、被写体である選手たちも"女性"ではありますが、だからといって、互が男性同士だった場合に"男性ならではの視点"などを求めないように、"女性ならではの視点"を求めるのは、根本的におかしな話なのかもしれません。むしろ同性だからこそ、互いに差異のないものとして、突き放した見方を選ぶこともできるのかな、と思いました。

 

 上映後は、渋谷昶子監督が現在入居されている老人ホームから外出できないということで、代わりに今回の上映を主導した三浦淳子監督が登壇し、トークとQ&Aが行われました。

 そこでは、監督デビュー作でもあった『挑戦』を撮られる際、渋谷昶子監督が女性であるがために男性スタッフからいやがらせを受けたエピソードや、作品の出来に驚いて手直しを求めたクライアントに対して要求を通すために、製作であった電通が監督を一時的に行方不明ということにしたというエピソードを聞くことができました、

 会場を見渡した限り、僕よりも高齢の方の方が多かったように見受けられたのですが、そのせいか、僕も若者としてどう思うかという感想を求められました。

 そのトークの間に明らかになったのですが、参加者の中には数名、映画監督、あるいは製作者の方がいらしたようで、その中にはピンク映画史上初の女性監督として350本以上のピンク映画を撮影し、現在も現役である浜野佐知監督や、ドキュメンタリー監督の山上千恵子監督の姿もありました。このように、もしかしたら映画の製作者の方々とも、ごく身近に触れ合えるイベントなのかもしれません。

 

 とても面白いイベントでした!